カナダで天然紅鮭(ベニザケ)が大量死した原因は遺伝的欠陥の可能性が高いとする論文が、
13日の米科学誌サイエンス(Science)に掲載された。遺伝の欠陥で免疫系が弱まり、
ウイルスへの抵抗力がなくなったためと考えられるという。
ブリティッシュ・コロンビア(British Columbia)州を中心に生息する成魚の
ベニザケは近年、数を40~95%も減らしており、同州の漁業に深刻な打撃となっているほか、
絶滅の危機さえ叫ばれている。
原因を探るため、研究者らは回遊を無事終えたサケのゲノムプロフィールを調べ、
産卵地に到達する前に死んだサケのものと比較した。
その結果、死んだサケには共通して「代謝と免疫関連のストレスを示す
遺伝子シグネチャー」が見いだされた。
このストレスの原因は特定できていない。だが研究者らは、
この遺伝子シグナチャーが産卵地の川に入る前に現れていることから、
「サケは川に入る前にウイルスに感染し、産卵地に到達するまで
ウイルスは生き残っていた」とする仮説を立てている。
サケが川で大量死したことは、1つの要因では説明できない。
だが統計分析によると、死んだサケの大半で、ある一貫した遺伝子群が見られるという。
ある研究者は、「これらの遺伝子の多くは、ウイルス活性との関連性が
知られている生物学的経路の中にあった」と指摘する。
カナダ太平洋岸のフレーザー川(Fraser River)に戻ってくるベニザケの数は2009年に激減。
そのためカナダ政府は原因究明委員会を発足させた。
(c)AFP