2011年5月28日土曜日

早期の抗レトロウイルス療法でパートナーへのHIV感染リスク低下、米研究

HIV感染者に、健康状態が悪化する前から抗レトロウイルス療法(ART)を受けさせた場合、

パートナーへの感染リスクが96%減少するという画期的な研究結果が12日、発表された。

 ARTがHIV感染者の健康を改善することはすでに知られているたが、HIV陰性のパートナーへの

感染防止に明確な影響を及ぼすことを示した研究は今回が初めて。エイズ研究者らは、

エイズの登場から30年を経て対処法を「一変させる」力を持つ研究結果だと評価している。

 米ノースカロライナ大(University of North Carolina)世界衛生感染症研究所

(Institute of Global Health and Infectious Diseases)のマイロン・コーエン

(Myron Cohen)所長率いる国際研究チームは、カップル1763組を対象とした実験を2005年に開始した。

カップルの居住地はブラジル、タイ、ジンバブエ、インド、南アフリカの13都市で、

97%は異性愛カップル。うち男性890人、女性873人がHIV感染者だった。

 実験では、カップルの片方がエイズ関連疾患を発症するか、T細胞「CD4」が1立法ミリメートル

あたり250個を下回った後にARTを受けるグループ(遅延グループ)と、

ただちにARTを受けるグループとに分類した。

 すると、早期にARTを受け始めたグループでパートナーへの感染が認められたのは1例だけ

だったのに対し、遅延グループでは、HIV感染者に起因した感染例は27例あった。

論文は、この差を「統計的に極めて有意」だと指摘している。

 実験は当初2015年まで続けられる予定だったが、極めて明確で著しい効果が早期に認められたとして、

研究チームでは無作為化フェーズは中止した。

 エイズは、1981年に初めての死者が確認されて以来、2500万人以上の死者を出し、

HIV感染者も累計で6000万人以上にのぼっている。国連(UN)の統計によると、

新たな感染の約80%は性交を通じてのものだという。

(c)AFP/Kerry Sheridan