5月23日に閉幕した第63回カンヌ国際映画祭(Cannes Film Festival)で、
審査員賞には、マハマット・サレー・ハルーン(Mahamat-Saleh Haroun)監督
(チャド)の『スクリーミング・マン(A Screaming Man)』が輝いた。
同映画祭のコンペティション部門にアフリカ映画が出品されること自体、13年ぶりのことだった。
その間、アフリカでは、各地の映画館の閉鎖が相次ぐ中、国産の大ヒット映画が
生まれてハリウッドの人気をもしのぐという「パラドックス」が生じていた。
■コートジボワールやセネガルでは衰退
アフリカ各地で、映画館は、閉鎖されたり、教会やナイトクラブ、
はたまた倉庫に改造されたりしている。閉鎖される映画館は、
平均して1か月に1館。平均的なアフリカ人には高すぎるチケット、
安く気軽に手に入る海賊版DVDのはんらんなどが理由として挙げられる。
現在も営業している映画館は、南アフリカやケニアを中心に、
大陸全体で約50館に過ぎない。
西アフリカの文化の十字路として映画産業が活況を呈してきた
コートジボワールではどうなのか。アフリカ最大の映画祭「フェスパコ(FESPACO)」
でグランプリを受賞したことがあるロジャー・ニョアン・ムバラ(Roger Gnoan M'Bala)監督は、
「映画は、まだ死んではいないにしても、死にひんしている」と言う。
ウスマン・センベーヌ(Ousmane Sembene)らアフリカ有数の巨匠を
早くから輩出してきたセネガルでは、現在、映画製作はほとんど行われていない。
■「ノリウッド」映画の製作本数はハリウッドのほぼ2倍
一方で、アフリカ最大の人口を抱えるナイジェリアでは、18年前に、
低予算映画の製作が一斉に始まった。製作費のかかる従来の35ミリフィルムではなく、
デジタルカメラを使って撮影するというもので、製作期間もたいていは1か月未満だ。
ナイジェリアの映画産業、通称「ノリウッド(Nollywood)」は、近年、
製作本数でハリウッドをはるかにしのぐまでになっている。
ユネスコ(UNESCO)の2009年の調査によると、製作本数の1位はインドのボリウッド
(Bollywood)で、2位はノリウッド、そして3位はハリウッドという結果だった。
2006年の製作本数を見ても、ナイジェリアは872本で米国の485本を倍近く上回っている。
■「ノリウッド」映画、人気の背景
さらに良いニュースは、アフリカ人たちがノリウッド映画を愛好しているという事実だ。
ナイジェリアのある映画監督は、「アフリカ人たちは、ハリウッドよりも
ノリウッドの方を頻繁にみている」と指摘する。
ノリウッド映画が扱うテーマは、おおよそ、汚職、不正、麻薬、人身売買、
恋の三角関係、呪術といった社会悪。そして、ほぼすべてが、ハッピーエンドだ。
ノリウッド映画が人気を博している理由の1つに、南アフリカの有料テレビ放送
「MultiChoice」の存在がある。同テレビにはアフリカもの、
特にナイジェリア映画ばかりを流している24時間放送のチャンネルが4つある。
うち2つは、ナイジェリアの言語であるヨルバ語とハウサ語でも放映されているという。
(c)AFP/Susan Njanji
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